マリア・ヒタ 『Maria Rita』『Segundo』『Samba Meu』

Maria Rita

Maria Rita。マリア・リタではなくマリア・ヒタと発音します。
この人のお母さんがエリス・ヘジーナ(レジーナ)だというと、ピンと来る人もいるんじゃないでしょうか。
エリス・ヘジーナは言うまでもなくボサノヴァ・MPBの代表的なミュージシャンですが、マリア・ヒタはその娘さんです。たしか親とは4歳くらいの頃に死別してるんですが、やはり血は争えません。その歌唱力がとんでもなく素晴らしいのです。
ブラジルではデビュー当初からその実力を高く評価され、ラテン・グラミー賞獲ったり最優秀MPB作品に選ばれたりしています。売れまくりです。
個人的にはエリスの娘ってことやセールスのことはどうでもよくて、単純な大ファンなんですが、なんでこんなに好きなんだろうって自問するくらい、その要因を誰かに説明することは難しく思います。
以下、簡単ながらレビュー。

ジャンルはMPB(ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ)、つまりブラジリアン・ポピュラー・ミュージック。
何でしょう、日本で言うところのJ-POPなのか?
まあ向こうでは「ボッサ=演歌」なので、その感覚を「J-POP」に当てはめてみて下さい。少なくとも古典的なボッサではないので、カフェのBGMとしてはふさわしくないと思います。
歌モノって感じ。

Maria Rita Caminho das A’guas


アルバムはこれまで3枚出してます。
1st『Maria Rita』、2nd『Segundo』、3rd『Samba Meu』。
どれを聴いても同じということは無く、アルバムごとに明確なコンセプトがありますが、オススメは2ndに付属のレコーディング風景を収録したDVD。
って何でやねん。
いや、本気でこれを勧めますよ。
私はこれを見て、ああ、地球上にはまだこんな世界があるんだ…って思いました。
音楽と人との、本当にピュアな関係と言うか、原始的な豊さというか。
音楽に対する疑いの無さというか。
もちろんビジネスとして企画・制作・レコーディングするわけですが、その現場では誰も金のことなんて考えてなくて、スタジオでは音と人との、個人的であり、また同時に閉鎖的な関係性があるだけの、凄まじく密度の高い空間が生まれていて、そこにミュージシャンやプロデューサーたちが集まり、一枚のアルバムを制作するという過程は、言葉にすると「豊かさ」、本当の意味でのリッチな体験なんだなあと思いましたよ。

あと、3rdの『Samba Meu』も非常によいです。
古典に立ち返ってサンバ!というコンセプトのようですが、サンバってこんなにいいもんなんだ、と思い知らされる一枚になっています。
私は恥ずかしながら、サンバというとなんかラテンのお姉ちゃんがヘソ出して踊りまくるというイメージしか無かったんですが、『Samba Meu』の一曲目、最初のマイナーコードでやられてしまいました。物悲しさと、明るさが、矛盾せずに一つのメロディを形作るんですね。日本のポップスにありがちな「売れるため」「泣かせるため」の技術ではなく、旋律の起伏が本当に自然で、毎日をそうして生きている南アメリカの人間の強さと悲しさが垣間見えるような気がします。

ブラジル。
物理的にも、精神的にも、日本とはまるで対極にある世界だと思います。
そんな世界でヒットしてるものが、この日本に住む私の琴線にも触れるというのは、何なんでしょうね。
自分の知らない世界がたくさんあると思います。
そして、自分の知らない世界に少しでも触れるため、私は音楽を聴くのだと思います。


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